日本全国で生産される日本酒は1万種類以上もありますが、その多様な味わいには使用される酒米の種類が重要な役割を果たしています。
この記事では、日本酒を構成する基本的な成分と、特に味の違いに影響を与える酒米の種類や産地の特性について、初心者にも分かりやすく解説します。
日本酒における酒米の役割
日本酒の原料
日本酒は酒米、水、酵母、そして麹菌の四つの主要な材料から作られます。
それぞれが日本酒造りに欠かせない材料ですが、この中でも酒米は日本酒の品質を決定づける最も重要な要素の一つです。
酒米(酒造好適米)とは
酒米(酒造好適米)は、日本酒製造のために特別に選ばれた米の品種です。
日常的に食べられる食用米と比較して、酒米には以下の特徴があります。
食用米よりも
- 大粒で、心白(米の中心にある白い部分)が大きい
- 柔らかい質感
これらの特徴により、酒米は発酵過程で酵母と麹菌が米の内部に浸透しやすくなり、効率よくアルコールを生成できます。
また、その柔らかさから精米(米を削ること)がしやすく、精米歩合を高めることでより純粋でクリアな味わいの日本酒を造ることが可能です。
日本国内には様々な酒米があり、それぞれが異なる特性を持つため、多様なスタイルの日本酒が生み出されています。
代表的な酒米5種の産地と特徴
酒米は全国で120種類以上あると言われています。
今回は2022年における生産量上位5選をピックアップして紹介します。
山田錦
主な生産地
- 兵庫県
特徴
山田錦は酒米の王様とも言われ、滑らかで上品な味わいを持つ日本酒を生み出すことで知られています。
最も有名な酒米なので、スーパーで名を冠した日本酒を見た方も多いのではないでしょうか。
その大粒で心白が広い米粒は、磨きやすく、高級な純米酒や大吟醸酒の造りに適しています。
有名な日本酒
- 獺祭 純米大吟醸45
- 醸し人九平次 純米大吟醸 山田錦
五百万石
有名な生産地
- 新潟県
特徴
五百万石は新潟県を代表する酒米で、軽やかな口当たりとキレの良さが特徴です。
この米は特に辛口の日本酒を造るのに適しており、さっぱりとした味わいが楽しめます。
粒が均一で、発酵が安定しやすいため、醸造家にとって扱いやすい酒米とされています。
有名な日本酒
- 久保田 萬寿 純米大吟醸
- 清酒 八海山
美山錦
有名な生産地
- 長野県
特徴
美山錦はフルーティな香りと繊細な味わいが特徴の酒米で、特に吟醸酒の造りに適しています。
この米から造られる日本酒は、華やかで香り高く、口当たりが非常に柔らかいです。
長野県で生まれただけあり冷性が強いため、中山間地での栽培に適しています。
有名な日本酒
- 真澄 純米 奥伝寒造り
- 新政 純米 瑠璃
雄町(おまち)
有名な生産地
- 岡山県
特徴
雄町は、力強い味わいと豊かな香りが特徴の古典的な酒米です。
この米を使用した日本酒は、濃厚で深い味わいがあり、独特の旨味が感じられます。
雄町は特に自然農法で栽培されることが多く、その個性的な特性が日本酒に独特の風味を与えています。
有名な日本酒
- モダン仙禽 雄町 火入
- 而今 純米吟醸 雄町
秋田酒こまち
有名な生産地
- 秋田県
特徴
秋田酒こまちは、清涼感とキレの良さが際立つ酒米で、特に純米酒や純米吟醸酒の造りに最適です。
この米から造られる日本酒は、香り高く、上品な甘みがあり、旨さと軽快な後味を持ちます。
余談ですが、食用米のあきたこまちは、秋田県出身で平安時代の歌人、小野小町から名付けられたそうです。
有名な日本酒
- 出羽桜 純米大吟醸
- まんさくの花 純米大吟醸
まとめ
日本酒の多様な味わいは、原料となる酒米の種類に大きく依存しています。
それぞれの酒米が持つ特徴によって、異なる風味の日本酒が生まれるのです。
日本酒の世界は奥深く、この多様性を知ることで、日本酒をさらに楽しむことが可能になります。
日本酒に慣れてきたら、酒米の種類を基準に選んでみるのも面白いでしょう。
ただし、すべての日本酒が酒米を明記しているわけではないので、参考にする際には注意が必要です。
この記事が日本酒の世界への入口となり、さらに多くの酒米や日本酒に興味を持っていただければ幸いです。